「ユニバーサルプレコーション実践マニュアル.新しい感染予防対策」(南江堂、1998)
の紹介と推薦医療の安全に関する研究会「安全教育分科会」編

  医療の安全に関する研究会、安全教育分科会がかねて(1年半をかけて)準備を進めてきた院内感染予防に関する啓蒙・実践書「ユニバーサルプレコーション実践マニュアル.新しい感染予防対策」が、1998年に南江堂から出版されました。計45名の全国に分布する分科会員による手弁当によるディスカッションと不断の努力が結晶化した作品です。作成メンバーには、医師、看護婦、薬剤師、臨床検査士、医療事務系職員、医療器材関係者、製薬関係者、院内清掃関係者、病院設計士、弁護士、医療コンサルタントといった多彩な顔ぶれが含まれております。皆、より安全で質の高い医療を目指す人たちなのです。
  さて、医療従事者に対する正しい安全教育なくしては、院内感染防止対策の効果はあがりません。本書では、「国際標準とみなされる院内感染予防策」を実践するに当たって必要な考え方、具体的な方策をわかりやすく記述しました。2色刷りによる簡潔な表示と親しみやすいイラストによって、細かな実践的な手ほどきがなされており、各医療施設における独自のマニュアルづくりの参考書として、また、医療従事者養成過程の学生用入門書として役立つと期待される自信作です。
   本マニュアルの構成は以下のごとくです。
T.総論(1.院内感染予防に関する基本事項、2.院内感染予防対策の基本)
U.MRSA 感染予防対策
V.針刺し事故防止対策

  ユニバーサルプレコーションとは、「すべての患者体液・排泄物を感染の可能性があるものとみなして取り扱う」病院内における患者ケアの大原則です。その目的は、患者を無用な交差感染から防ぐことと、医療従事者の職務感染を防ぐことにあります。すべての患者が、感染性病原体の有無に拘わらず、差別のない一定の質のケアを受けられる利点が得られるのです。ここでは、ユニバーサルプレコーションを米国におけるスタンダードプレコーションを含む広い意味で使用致しました。
  この本のポリシーは、内容が国際標準であること、患者のためになること、コスト・エフェクティブであること、環境に優しいこと、実践的であることとしました。従って、これまでに出版された教科書では曖昧だった点を明確にして、なすべきこと・行う必要のないこと・行ってはいけないことをなるべくはっきりわかりやすく記述しました。
  たとえば、「感染経路別対策の徹底」、「一処理・一手洗いの原則」、「いつ消毒剤を用いた手洗いをすべきか」、「いつ手袋を着用すべきか」、「消毒が先か、洗浄が先か」、「感染リスクに応じた感染防止対策:床の消毒は無用」、「消毒剤の噴霧無用」、「環境の細菌検査無用」、「原則としてマスク無用」、「粘着マット無用」、「ナースキャップ無用」、「リネン類は熱による消毒を!」、「ムピロシン鼻腔用軟膏の慎重使用」、「MRSA 陽性患者隔離の意義の見直し」などなど、ぜひともお勧めしたい内容です。

(全 122 ページ、¥3,800、税別、南江堂、東京、1998年7月20日初版)

安全教育分科会担当理事  堤 寛 Yutaka Tsutsumi, M.D.
(医療事故情報センターニュース 126、1998年9月1日号より)

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