「完全病理学各論Element版」の刊行によせて

 本書は、前著「完全病理学各論」(全12巻、学際企画)の医学生向けの縮刷版である。

 「完全病理学各論」(全12巻)は、難産の末、2007年4月に学際企画より刊行された。これは、「画像詳解 完全病理学総論」(医学教育出版社、2005年5月)と対をなす、今どき珍しい単著の教科書である。自慢の標本コレクターのひとりである著者が、可能な限り自力で集めた症例を中心に、30年にわたる自らの病理学のすべてを集結した渾身の作品といえる。

  提示した症例総数は815(うちパネルは32、element=重要症例は218)、正常パネルは総数20である。PRINCIPAL 30編、STEP UP 107編、COLUMN 260編がちりばめられている。common diseaseもrare diseaseも対等に取り扱う「症例提示」の形をとることを通じて、"症例に軽重の差はない"ことを信条として一貫した点も特徴といえる。

  2008年11月には、講義やディスカッション用に使いやすいCD-ROM版が出版される。必要な画像・図表をダウンロードして、フォトショップなどで自在に加工することが可能である。

 「完全病理学各論Element版」は、医学生向けに、重要疾患をピックアップして一冊にまとめたものである。正常パネルを第一部としてまとめ、第二部に症例200およびパネル24を配した。選択された症例(common diseaseないし重要疾患)は、「完全病理学各論」(全12巻)にelementと表示した症例の大部分に相当する。ページ数の制限から、とても残念なことに、PRINCIPAL、STEP UPならびにCOLUMNはすべて掲載できなかった。PRINCIPALとCOLUMNの一部は、気楽に読んでもらい、「なるほど!」とつぶやいてもらうことを主な目的としていたので、返すがえすも心残りである。この意味で、このElement版が味毛のない"病理アトラス"になってしまったことを、まず謝りたい。

 「完全病理学各論Element版」は、便利な副読本として利用してほしい。医学部低学年の病理学の学習のみならず、医学部5〜6年生用の医師国家試験対策用アトラスとしてもお奨めである。パラメディカルの教育用に利用するのも有用と思われる。

 病理画像が医師国家試験に出題される頻度は低くない。そのうえ、病理画像は複雑でわかりにくい。各病理画像にシェーマをつけ加えることで、画像における個々の要素の読み取りが容易となり、病理画像の面白さを引き出すように工夫されているのが本書の"売り"の1つといえる。本書に対する率直なご批判は遠慮なくいただきたい。

 感想や意見を下記までメールしていただければ幸いである。

2008年10月

症例提供協力施設ならびに協力者

 症例提供施設として、東海大学医学部付属病院(伊勢原)およびけいゆう病院(横浜)からの症例が最も多い。東海大学医学部附属東京病院(東京)、同大磯病院(大磯)、藤田保健衛生大学病院(豊明)、慶応義塾大学医学部付属病院(東京)などの症例も一部使用させていただいた。

 以下に、症例提供協力者の名前をあげてさせていただき、深甚なる謝辞をささげたい。失礼ながら、敬称は省略させていただきます。

長村義之、上山義人、伊藤仁(東海大学医学部病理診断学)、宮地勇人(同臨床病理学)、遠藤正之(同腎臓内科)、小澤明(同皮膚科)、篠原治(同小児科)、栗原由佳(同八王子病院リハビリテーション科)、多田伸彦(同健康科学部病理)、杉山敏(藤田保健衛生大学医学部腎臓内科)、松永佳世子(同皮膚科)、平澤浩(藤田保健衛生大学病院病理部)、山本直樹(藤田保健衛生大学総合医科学研究所共同利用研究施設)、森一郎(和歌山医科大学病院病理)、茅野秀一(埼玉医科大学病理)、渋谷誠(東京医大八王子病院病理)、気賀沢一輝(杏林大学医学部眼科)、里悌子(けいゆう病院病理)、小野田登(大和市立病院病理)、加藤優子(海老名総合病院病理)、笠原正男(静岡赤十字病院病理)、大西山大(福友病院、日進)、郡美夫(千葉市立病院検査部)、永山憲市(Raffles Japanese Clinic、シンガポール)、下里幸雄(もと国立がんセンター病理)、秦順一(国立成育医療センター研究所)、小川恵弘(貴友会王子病院病理、東京)、沖坂重邦(眼病理教育研究所)、Nirush Lertprasertsuke(チェンマイ大学病理)


藤田保健衛生大学医学部第一病理学
堤 寛 Yutaka Tsutsumi, M.D.
e-mail
: tsutsumi@fujita-hu.ac.jp

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