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Medical Terminology
「医学用語の解剖学」
堤 ェ 編


藤田保健衛生大学医学部第一病理学
堤 寛 Yutaka Tsutsumi, M.D.


 米国で発行されている医学用語の覚え方集を種本にして、「医学用語の解剖学」をまとめた。医学用語の多くは合成語であるため、医学用語の成分を分解してそれぞれの意味を探ることは重要である。ここでは、医学用語に用いられる代表的なword root(語幹)、prefix(接頭語)、suffix(接尾語)およびラテン語の複数形をまとめた。辞書として活用していただけると幸いである。
 Medical Terminology 「医学用語の解剖学」

 英語に対する私のスタンスは以下のエッセイを読んでほしい。Good luck!


病理診断報告書は日本語で書くべきか
 筆者は習慣的にすべての病理報告書を英語で記述している。理由はつぎの通りだ。
@毎日のように同じような言い回しを使うので、英語に対する違和感がない。
A日本語は漢字変換が必須であり、とくに医学用語の変換には専用辞書が必要となるが、英語ならその手間はいらない。大量の報告書を手書きすることは望ましくないし、読みとれない字が多くなるのはカルテの場合と同じである。
B病院のコンピュータシステムに医学用語に関する日本語辞書機能がついていないことが多い。

以前、患者さんへのがんの告知が例外的だったころは、最終診断たる病理診断は患者さんになるべく"わかりにくい"形で書くことが求められていた。そのため、臨床医が記載する臨床診断の項目には略号が多かった。MKは胃がん、LKは肺がん、CKは大腸がん、PKKは膵頭部がん、MMKは乳がんといったぐあいだ(いずれもドイツ語の頭文字)。そう、最近ドイツ語ははやらない。医学部でドイツ語を習わなくてもよくなって久しい。病棟に生き残るドイツ語はとても断片的だ。"ステる"とはドイツ語のシュテルベンの略で、「死ぬ」の業界用語で、「捨てる」ではない。

 病理診断報告書の添付ががん保険の支払いに必要になり、がんの告知が普及してきた現在では、患者さんになるべく"わかりやすい"ことばで報告書を記述することが求められている(この意味でも、ドイツ語の衰退に拍車がかけられている)。その証拠に、多くの病院で、病理報告書の所見欄が日本語で記載されるようになりつつある(ただし、診断病名のみは英語で記述されることが多い)。
 ところで、医療情報の国際化は否応なしにどんどん進んでいる。わが国における英語の公用語化や医師の国際免許が取り沙汰される昨今、英語を捨てて日本語に回帰するドメスティックな方向性は、少なくとも医学教育の立場からは望ましくない。筆者はこれでも、医学教育にはだれより熱心なつもりだ。

 ヨーロッパ連合(EU)では、医師免許をはじめとする諸種の国家資格が共有化されようとしている。そこでは英語が共通言語だ。この国家の壁を乗り越えたヨーロッパの歴史的で壮大な試みを無視してよかろうはずがない。医学生に限らず、わが国の大学生は皆、日本語の教科書だけで学問ができる。その例外性に多くの人は気づいていない。
日本以外の国では、英語(最低、ヨーロッパ系言語)ができなければよい教科書が読めないし、医者にも看護師にも臨床検査技師にもなれない。日本語は漢字のおかげで、外来語を簡単に母国語化するすばらしい能力を有していることを再確認したい。タイ語やスワヒリ語では医学用語の大部分が表現できない。韓国でも、医学生は英語でばかり勉強して、ちっともハングルで勉強してくれないと多くの教員が嘆いている。

 さて、目の前の患者さんのために日本語をとるか、将来の日本の社会ために英語をとるか。どちらも大切なのだが、さて、読者の皆さんの判断やいかに。

連絡先: 堤 寛 Yutaka Tsutsumi, M.D.
藤田保健衛生大学医学部第一病理学
〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98

tel: 0562-93-2439、fax: 0562-93-3063
e-mai:tsutsumi@fujita-hu.ac.jp
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